銅版画家、1952年埼玉県生まれ、京都市立芸術大学西洋画専攻科修了、1978年日本現代版画大賞展西武賞、1980年京都市芸術新人賞、1983年韓国国際版画ビエンナーレ優秀賞、1992年『Lの贈り物』（集英社）で講談社出版文化賞ブックデザイン賞、2007年京都府文化賞功労賞、2011年京都美術文化賞受賞、2013年平成25年度京都市文化功労者、都会的で軽快洒脱な色彩で、独自の銅版画の世界を確立、絵画に音楽や詩を融合させるジャンルを超えたコラボレーションを展開、数多くの書籍の装幀、挿画をてがける

山本容子「CARRELAGE PHONIQUE」顔料 コンテ アクリル 10号大 1987年作
本作品「CARRELAGE PHONIQUE エリック・サティ」は、フランスの作曲家エリック・サティへのオマージュとして制作された作品です。この作品は、鮮やかなオレンジを背景に、軽快な線描きで人物や家具が配置され、都会的で詩的な空間を描き出しています。タイトルに含まれる「CARRELAGE PHONIQUE（音響タイル）」は、「タイルのように敷き詰められた音」や「音響的な空間」を意味し、サティの音楽が持つリズムや繰り返し、軽やかさを視覚的に表現していると考えられます。

作品全体には、サティが提唱した「家具の音楽（musique d'ameublement）」の概念が感じられます。これは、音楽がただ聴かれるだけでなく、空間の一部として自然に存在するという思想であり、山本容子はこれを視覚芸術として再解釈しました。絵の中の人物たちはソファや椅子に座りながら談笑し、背景の家具やアイテムが調和した空間を形成しています。この構成は、音楽が日常の中に溶け込むような情景を連想させます。

また、エリック・サティの音楽と同様に、この作品にはユーモアや軽快さ、詩的な要素が溢れています。描かれた線の軽やかさや空間の使い方には、山本容子独自の洗練されたスタイルが反映されており、見る者に日常の中に潜むリズムや美しさを感じさせます。「CARRELAGE PHONIQUE エリック・サティ」は、音楽と絵画の融合を追求した山本容子の才能が光る一枚です。都会的な洗練と詩的な感覚が共存するこの作品は、鑑賞者に軽やかな余韻と創造的な想像をもたらします。画伯の貴重なオリジナル作品・Switch掲載作品の名画です。